神戸地方裁判所 平成2年(ワ)1555号 判決 1992年7月17日
原告
宇都宮武實
被告
栗山運輸株式会社
主文
一 被告は、原告に対し、金二〇五万二七四〇円及びこれに対する昭和六二年五月二一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを五分し、その四を原告の、その一を被告の、各負担とする。
四 この判決は、原告勝訴部分に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告は、原告に対し、金八六六万四二五一円及びこれに対する昭和六二年五月二一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、後退中の普通貨物自動車後部と勤務先守衛室外側カウンターの間に挟まれた者が、右事故により負傷したとして、右普通貨物自動車運転者の使用者に対し、民法七一五条に基づき損害賠償の請求をした事件である。
一 争いのない事実
1 別紙事故目録記載の事故(以下、本件事故という。)の発生。
2 被告の本件責任原因に関し、被告が本件事故当時霜の使用者であり、霜が被告の業務執行中右事故を発生させた事実。
3 原告が本件事故により受傷して、昭和六二年五月二〇日から同年六月一九日まで私立京都八幡病院に入院し、その後、市立豊中病院において治療を受けた事実。
4 原告が、本件事故後、昭和六二年五月二〇日から昭和六三年一一月三〇日までの本件治療につき、労災保険から医療給付金二一五万四七九〇円、休業給付金二三万五七五〇円を受領した事実。
なお、被告は、原告が受給した右医療給付中金一九三万九三一一円(治療費相当)、右休業給付中金二一万二一七五円の合計金二一五万一四八六円(休業損害相当)を労災保険から求償請求を受け支払つている故、被告の原告に対する本件損害の填補は、同金二一五万一四八六円である旨自認している。
二 争点
1 被告の本件責任原因(民法七一五条所定の使用者責任)の有無。
霜の本件事故発生に対する過失の有無。
原告の主張
霜は、本件事故当時、被告車を運転し右事故現場において進路を変更すべく自車を後退させていたものであるが、この際、自車後方の見通しが悪いのであるから、後退方向の安全を十分確認して自車を後退させねばならない注意義務があるのに、これを怠り、漫然自車を後退させた過失により、右事故を惹起した。
被告の主張
霜が本件事故当時被告車を運転し右事故現場において進路を変更すべく自車を後退させていたこと、同事故の発生は認めるが、原告のその余の主張事実は全て否認し、その主張は争う。
2 原告の本件受傷の具体的内容及びその治療経過(ただし、当事者間に争いのない前記事実を除く。)。
3 原告の本件後遺障害の存否と存在する場合の程度。
原告の主張
原告の本件受傷は、昭和六三年三月一四日症状固定し、次の後遺障害が残存した。
坐位、臥位においては、右側の坐骨・恥骨・仙腸関節・腸骨稜にわたる一帯に疼痛を覚え同一姿勢を長く続けることが困難である。
しかして、原告の右後遺障害の程度は、障害等級一二級に該当する。
被告の主張
原告の主張事実は全て否認。
仮に、原告に本件後遺障害が残存しているとしても、右後遺障害の内容は、何ら他覚的所見のない腰部付近の軽度な疼痛に過ぎないから、到底障害等級に該当するものではない。
4 原告の本件損害の具体的内容
特に主要争点となる損害費目は、後遺障害による逸失利益の存否
5 過失相殺の成否
被告の主張
(一) 霜は、本件事故直前、被告車を運転して株式会社伊藤喜工作所に赴き、同工作所敷地内(以下、本件現場敷地内という。)の国道一号線から見て左側に位置する駐車場に自車を駐車させようとしたが、同駐車場が満車であつたため、同工作所内で自車を方向転換させたうえ右側駐車場にこれを駐車させようとした。そして、同人は、その際、自車を一旦後退させて右工作所入口に至り、自車のハンドルを右に切りながら前進させ、再度同ハンドルを左に切りながら後退させたところ、偶々、原告が、同工作所入口左側に位置する守衛室の外で、被告車に背を向けて立つていたため、同人を、被告車と同守衛室外側カウンターとの間に挟んでしまい、右事故が発生した。
(二) 原告は、右事故当時、右工作所の守衛として勤務していたところ、守衛であれば当然同工作所敷地内に進入して来る車両の有無並びに進入車両の同工作所敷地内における動静に注意すべき注意義務があるにもかかわらず、同人は、同敷地内で方向転換をしようとしている被告車の動静に全く注意を払わず、漫然同車両に背を向けていた過失があつた。
よつて、原告の右過失は、同人の本件損害額を算定するに当たつて、これを斟酌すべきである。
原告の主張
被告の主張事実中被告車が本件事故直前本件現場敷地内で方向転換のため後退した際原告を同車両後部と同敷地内所在守衛室外側カウンターの間に挟み、同事故が発生したこと、原告が右事故当時右守衛室において守衛として勤務していたことは認めるが、その余の主張事実は全て否認し、その主張は争う。
原告は、右事故当時、右守衛室に来客があり、同来客に守衛として対応し、同守衛室外側カウンター前において来客名簿への記入につき指導していたところ、突然、同事故に遭遇したものである。
被告車には後退の際の警音装置もなく、霜以外の後方確認者もいなかつた。
一方、原告は、右事故当時、守衛としての職務を忠実に実行していたのであり、そのため、同人において同事故の発生を予見回避することは不可能であつた。
よつて、原告には、右事故発生に対する過失がない。
第三争点に対する判断
一 被告の本件責任原因の有無
霜の本件事故発生に対する過失の有無
1 本件事故の発生は、当事者間に争いがない。
2(一) 証拠(乙一、原告本人、弁論の全趣旨。)によれば、次の各事実が認められる。
(1) 霜は、本件事故直前、本件現場敷地内において、同敷地内左側(国道一号線に面した正門よりの進入経路を基準。以下同じ。)の駐車場へ自車を駐車させようとしたが、同駐車場が満車であつたため、これを同敷地内右側駐車場へ駐車させようとした。
そこで、同人は、自車を右側に方向転換させようと一旦右正門付近まで後退させハンドルを右に切つて進行したが一回で回り切れず、さらに自車を同正門付近まで後退させたところ、右事故が発生した。
(2) 被告車には、後退のための警音装置もなく、同車両の運転者である霜以外、同車両の後退を誘導する者もいなかつた。
(二) 右認定各事実を総合すると、霜には、本件事故直前、その進路変更のため被告車を後退させるに際し、自車後方の安全を十分に確認してこれを後退させるべき注意義務があつたにもかかわらず、同人においてこれを怠り漫然自車を後退させた過失により、右事故を惹起したというべきである。
3 当事者間に争いのない前記各事実及び右認定説示を総合すると、被告には、民法七一五条に則り、原告の本件損害を賠償すべき責任があるというべきである。
二 原告の本件受傷の具体的内容及びその治療経過
1 原告の本件受傷の具体的内容
証拠(甲五の1、八)によれば、原告は、本件事故により、側腹部筋肉挫滅・胸腹部打撲傷・急性腹症・右前腕部打撲挫創・外傷性小腸破裂・汎発性腹膜炎・ストレス潰瘍・骨盤骨折(右腸骨)の傷害を受けたことが認められる。
2 原告の本件受傷の治療経過
(一) 原告が昭和六二年五月二〇日から同年六月一九日まで市立京都八幡病院に入院し、その後、市立豊中病院において、それぞれ治療を受けたことは、当事者間に争いがない。
(二) 証拠(甲五の4ないし10、乙五、六、原告本人。)によれば、原告が、昭和六二年五月二一日、右京都八幡病院担当医から、本件受傷による腸穿孔のため腹膜炎になり緊急手術の必要があると診断され、同日、小腸部分切除の手術(病名 腸穿孔性汎発性腹膜炎・手術内容とその他関連事項 穿孔部切除、腹腔ドレナージ、腎出血の確認。)を受けたこと、原告が、昭和六二年六月二二日から昭和六三年三月一四日までの市立豊中病院へ通院(同病院外科 昭和六二年六月二二日から同年九月四日まで、同病院整形外科同年九月八日から昭和六三年三月一四日まで。)して治療を受けたこと(実治療日数一〇日)、同人が、昭和六三年三月一四日、同病院整形外科担当医から症状固定の説明を受けたことが認められる。
(三) 右認定各事実を総合すると、原告の本件受傷は、昭和六三年三月一四日、症状固定したと認めるのが相当である。
三 原告の本件後遺障害の存否及び存在する場合の程度
1 原告の本件後遺障害の存否
(一) 原告の本件受傷の具体的内容及びその治療経過は、前記認定のとおりである。
(二) 証拠(甲一の1、五の102、104、証人吉田、原告本人。)によれば、原告は現在背骨・腰椎部から右腸骨部にかけての疼痛を訴えているが、前記京都八幡病院担当医も、外科・整形外科医師吉田正和も、原告の本件受傷内容から医学的に見て同人にこのような後遺障害が残存し得る旨の意見を表明していることが認められる。
(三) 右認定各事実を総合すると、原告には、現在、同人の背骨・腰椎部から右腸骨部にかけての疼痛が本件後遺障害として残存していると認めるのが相当である。
2 原告の本件後遺障害の程度
(一) 原告は、同人の本件後遺障害の程度につき障害等級一二級該当と主張し、右主張事実にそう証拠として、証人吉田正和作成の平成元年六月一六日付後遺障害診断書(甲一の1)、同証人の供述があり、同証拠によれば、原告の右主張事実は、一見肯認できるかの如くである。
(二)(1) しかしながら、一方、前記豊中病院の原告関係診療録(乙五、六、証人吉田、原告本人の各一部。)によると、次の各事実がみとめられる。
(a) 原告に対する右豊中病院外科における初診時(昭和六二年六月二二日)の診断は、小腸破裂術後(外傷性)右腸骨部打撲であつたが、同人は、第二回受診の同年六月二九日、担当医に対して、仕事をしても良いかと尋ね、第三回受診の同年七月一四日、担当医に対して、勤務している旨答えている。
(b) 原告は、第六回受診の昭和六二年九月四日、右外科担当医に対して、腰痛を訴え精密検査を希望し、同担当医は、同人を同病院整形外科に紹介をしたところ、同人は、同年九月八日、同整形外科で受診をした。
そして、右整形外科担当医の診断は、原告の主訴箇所に圧痛を認めたが、神経学的徴候はマイナスと診断した。
それに先立ち、右病院外科担当医は、同病院整形外科医に対して原告の訴える症状につき診断を求めていたが、同整形外科医の同年九月八日付回答は、レントゲン線上骨折や脱臼後の所見は認められず、神経症状も見られないというものであつた。
(c) 原告は、その後右病院外科にも同整形外科にも通院せず、同年一二月二一日、同整形外科に赴き診察を受けたが、同人は、その際、担当医に対して、腰痛及び骨盤部・両大腿部の疼痛を訴え、ここでも精密検査を希望したものの、同人は同月七月一一日から就業している旨述べている。
しかし、右担当医記載のカルテには、原告本人は良くしやべるが何がいいたいのか良く分からない、同人は同担当医の説明を聞こうとしない旨及び右腸骨部骨折・側腹部筋肉挫滅については前記京都八幡病院でも保存的治療で経過順調であつた、したがつて、この点については問題は少ないと考えられる旨記載されている。
(d) 原告は、昭和六三年一月一四日、右整形外科医の診察を受けたが、同人は、その際、右下にして寝ると痛い、両臀部~大腿部に痛みを感じることがある旨訴えた。
しかし、右担当医の診断は、股:関節可動域良好・運動痛マイナス・筋力a・右腸骨部圧痛軽度・腫れマイナス・その他神経症状マイナスであつた。
(e) 右整形外科担当医は、このような経過の後、昭和六三年三月一四日、症状固定について説明した。
しかし、右担当医は、原告において自賠責保険関係に提出する本件後遺障害診断書を作成していない。
(f) 外科・整形外科医師吉田正和は、平成元年四月二四日、原告を診察し、同診察結果とその後二~三回同人に尋ねたことと同人が持参した前記京都八幡病院の診療録・レントゲン写真二六枚・腹部CT一七枚に基づき、前記後遺障害診断書(甲一の1)を作成した。
吉田医師は、その際、前記豊中病院の関係資料を一切閲覧していないし、原告の本件関係病院への照会等も全くしていない。
(2) 右認定各事実を総合して得られる一連の事実関係に照らすと、前記2(一)掲記の各証拠の実質的証拠力は減殺され、原告の本件後遺障害の程度が原告主張の障害等級一二級該当であるとの点は勿論、右障害等級の最低級に該当するとの点についても疑いを抱かざるを得ず、結局、原告の前記主張事実については、未だこれにつき確信を抱くに至らない。
むしろ、右認定事実関係に基づくと、原告の本件後遺障害は、何ら他覚的所見のない腰部付近の軽度な疼痛に過ぎないと認めざるを得ない。
四 原告の本件損害の具体的内容
1 入院雑費 金三万四一〇〇円
原告が昭和六二年五月二〇日から同年六月一九日までの三一日間本件受傷治療のため前記京都八幡病院に入院したことは、当事者間に争いがない。
そこで、本件事故と相当因果関係に立つ損害(以下、本件損害という。)としての入院雑費は、右入院期間三一日中一日当たり金一一〇〇円の割合による合計金三万四一〇〇円と認める。
2 付添看護費 金四万五〇〇〇円
(一)(1) 原告の本件入院期間三一日は、当事者間に争いがなく、同人の本件受傷の具体的内容及びその治療経過は、前記認定のとおりである。
(2) 証拠(原告本人)によれば、原告の妻が、原告の右入院期間の内合計一〇日付添看護に当たつたことが認められる。
(二) 右認定を総合すると、原告の妻の付添看護費も本件損害と認めるのが相当であるところ、同付添看護費は、右付添日合計一〇日につき一日当たり金四五〇〇円の割合による合計金四万五〇〇〇円と認める。
3 診断書料 金七万三六四〇円
証拠(甲一の2、3、原告本人。)によれば、原告が前記医師吉田正和作成の前記後遺障害診断書(甲一の1)作成のための費用として金七万三六四〇円を支払つたことが認められる。
よつて、右診断書料金七万三六四〇円も本件損害と認める。
4 後遺障害による逸失利益
(一) 原告は、同人に障害等級一二級該当の後遺障害が残存し、そのため、同人において、少なくとも一四パーセント相当の労働能力を喪失している旨主張している。
確かに、原告に本件後遺障害が残存していることは、前記認定のとおりである。
しかしながら、
(二) 原告の本件後遺障害の程度については、前記認定のとおりであるところ、証拠(原告本人)によれば、原告は、昭和六二年七月一一日より従前の職場に復帰し昭和六三年九月末定年退職したこと、同人のその間の給与額に減額がなかつたことが認められ、右認定各事実に照らしても、原告の右主張事実は、これを肯認するに至らない。
むしろ、右認定各事実を総合すると、原告の本件後遺障害は、未だ同人の労働能力の喪失を招来する程度に至つていないと認めるのが相当である。
(三) よつて、原告の本件後遺障害による逸失利益の主張は、その余の主張事実について判断するまでもなく、右認定説示の点で既に理由がない。
5 慰謝料 金一九〇万円
原告の本件受傷の具体的内容及びその治療経過、同人の本件後遺障害の残存及びその程度等は、前記認定のとおりである。
右認定各事実を総合すると、原告の本件慰謝料は、合計金一九〇万円と認めるのが相当である。
6 原告の本件損害の合計額 金二〇五万二七四〇円
四 過失相殺の成否
1 本件事故の発生、被告の過失相殺に関する主張事実中被告車が、本件事故直前、本件現場敷地内で方向転換のため後退した際、原告を、同車両後部と同敷地内所在守衛室外側カウンターの間に挟み、同事故が発生したこと、原告が、右事故当時、右守衛室において、守衛として勤務していたことは、当事者間に争いがない。
2 証拠(乙一、原告本人。)によれば、本件現場敷地は、国道一号線に面して正門があり、同正門から同敷地内に入つて直ぐ左側に本件守衛室があること、同敷地内の正門に事務所・工場の建物があり、同敷地の左右に駐車場が設置されていること、同敷地内の出入りには、右正門及び右守衛室前を必ず通行しなければならないことが認められる。
3 被告は、本件過失相殺に関する主張中原告において本件事故当時被告車の動向に注意を払わず漫然同車両に背を向けていた旨主張している。
(一) しかして、被告の右主張事実にそう証拠としては、第三者行為災害報告書(乙一)があるが、右文書の記載内容は、後掲証拠と対比して具体性に乏しくにわかに信用することができず、他に右主張事実を肯認するに足りる的確な証拠はない。
(二) かえつて、被告車には本件事故当時後退のための警音装置がなく、後退誘導者もいなかつたことは、前記認定のとおりであり、更に、証拠(原告本人、弁論の全趣旨。)によれば、原告の本件事故当時の勤務時間は、午前八時から午後五時までであり、その業務内容は、来客がない場合には前記守衛室において前記正門を出入りする者や車両を監視し、来客があつた場合には来客名簿への記入指導であつたこと、そして、同来客名簿の記入指導は、原告において同守衛室の内側からする場合もあつたし、同守衛室から外へ出て守衛室外側カウンターでする場合もあつたこと、原告は、右事故直前、同守衛室から外へ出て同守衛室外側カウンターの前で同守衛室の方を向き、即ち前記事務所・工場方面に背を向けて、来客に対して右来客名簿への記入指導を行つていたことが認められ、右認定各事実を総合すると、原告には右事故当時右事故の発生を事前に予見することは不可能であつたというべく、したがつて、被告の前記主張事実は、これを肯認するに至らない。
(三) よつて、被告の本件過失相殺の主張(抗弁)は、その余の主張の当否について判断するまでもなく、右認定説示の点で既に理由がない。
五 損害の填補
原告が本件事故後労災保険から療養給付(治療費相当分)金一九三万九三一一円、休業給付(休業損害分)金二一万二一七五円の、各支給を受けたことは、当事者間に争いがない。
しかしながら、原告が本訴において治療費及び休業損害を請求損害費目としていないことは、本件訴訟資料から明らかであるし、本件過失相殺が肯認できないことは、前記認定説示のとおりである。
しからば、当事者間に争いのない右受領金をもつて、原告の前記認定にかかる本件損害に対する填補とすることはできないというべきである。
六 結論
以上の全認定説示に基づき、原告は、被告に対し、本件損害合計金二〇五万二七四〇円及びこれに対する本件事故の日の翌日であることが当事者に争いのない昭和六二年五月二一日(この点は、原告自らの主張に基づく。)から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める権利を有するというべきである。
よつて、原告の本訴請求は、右認定の限度で理由があるから、その範囲内でこれを認容し、その余は理由がないから、これを棄却する。
(裁判官 鳥飼英助)
事故目録
一 日時 昭和六二年五月二〇日午後一時頃
二 場所 京都府八幡市戸津中代四六番地株式会社伊藤喜工作所京都工場内守衛室前
三 被害者 右守衛室外に居合わせた原告
四 加害(被告)車 霜雅男(以下、霜という。)運転の普通貨物自動車
五 事故の態様 被告車が、右工場敷地内正門付近で進路変更のため後退したところ、原告が、右守衛室外側カウンター付近に居合わせたため、同人を被告車後部と同カウンター外側との間に挟み込んでしまつた。
以上